
トランプ大統領とプーチン大統領が米国東部時間の19日午前、約1時間30分に渡って会談した。首脳会談に先立ち、プーチン大統領はウクライナ戦争の停戦条件を提示していたが、トランプ政権はこの停戦条件については熟知しており、今回の米露首脳会談はこの停戦条件を確認した上で、とりあえず、ロシア・ウクライナ双方のエネルギー関連施設への攻撃を止め、部分停戦に入るとともに、23日からのサウジアラビアの米露高官チームで、プーチン大統領が示した条件について煮詰める方向になるものと思われる。トランプ大統領にとっては、プーチン大統領が展開した「特別軍事作戦」の実施理由については熟知していると思われ、プーチン政権の方が交渉しやすい。それに、中東でイスラエルとハマスの停戦協定が崩壊寸前に来ており、BRICSに加盟しているイランを説得するため、ロシアのプーチン政権の影響力を借りる必要がある。
ゼレンスキー政権は内分裂し、ウクライナ戦争は米露主導で終戦へ
オールド・メディアによる今回の米露首脳会談について、ロイター通信の「米ロ首脳、ウクライナ全面停戦合意せず インフラ攻撃30日間停止」(https://jp.reuters.com/world/ukraine/NEEU3BDE5NKJNJWOCN5IWDYGIE-2025-03-18/)から引用させていただく。
トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は18日、電話会談を行い、ウクライナのエネルギー施設やインフラに対する攻撃を30日間停止することで合意した。ただし、プーチン大統領は米国が提示する広範な停戦案は受け入れなかった。ウクライナのゼレンスキー大統領は米ロの合意を受け、限定的な停戦案を前向きに検討すると表明。同時に、欧州の安全保障は欧州と共に決定されなければならないとし、欧州もウクライナ和平協議に参加する必要があるとの考えを改めて示した。 もっと見る。ホワイトハウスは、黒海における海上停戦、より完全な停戦、そして恒久的な和平合意に関する協議が直ちに開始されると発表した。ウクライナが協議に関与するかどうかは不明。米国のウィットコフ中東担当特使は、ウクライナ紛争に関するロシアとの協議が23日にサウジアラビアのジッダで行われると明らかにした。 もっと見る。(ウィットコフ中東担当特使は、)FOXニュースの番組で「つい最近まで、この2つの側面、すなわちエネルギーとインフラの停戦、および黒海における砲撃のモラトリアムについては、全くコンセンサスが得られていなかった。そして今日、ようやくその段階に到達した。そこから完全な停戦(注:実質的に終戦のことだろう)までは、比較的短い距離だと思う」と語った。
プーチン大統領がトランプ政権に示した停戦から終戦に至る条件については、Youtubeで、国際情勢ジャーナリストの及川幸久氏が公開している「The Core」チャンネルの「トランプのウクライナ停戦案に対して、プーチンが逆提案」の動画に詳しい(https://www.youtube.com/watch?v=zB8w4X1N2JA&t=1103s)。動画の要点を二点、キャプチャさせていただく。二点のうちのひとつは、全面的な停戦に入るためには、技術的な面から煮詰めなければならないことが多々あるということである。ふたつ目は、不可逆的な終戦に至らなければ、停戦しても意味がないということだ。
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トランプ政権が提案した全面的停戦は、ウクライナの戦線が2000kmと広大なため、停戦違反を監視するのは極めて困難である。この停戦監視システムについて、米露間で詳細に煮詰め、ウクライナ側の了解も取らなければならない。そして、停戦してもまた戦闘・戦争に戻るのであれば、意味がない。その意味で、ロシアに「特別軍事作戦」を展開させた根本原因を取り除かなければならない。その根本原因とは、①ウクライナがNATOに加盟しないことを確約する(NATOとロシアが和解するまでだが、和解すればNATOは過去の遺物になり、欧露間に新たな関係を築くことが出来る)②ウクライナの完全な非武装化と非ナチ化③東部のロシア語圏(ロシア系ウクライナ人が多い東南部のドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州)をロシアに編入し、ロシア系ウクライナ人を守る④ウクライナ政権が行ってきた生物兵器の開発を止めるーことだ。
なお、余談だが、大統領選挙による新たなウクライナ政権が、マイダン暴力革命で追放されたヤヌコーヴィッチ政権のように当面、親露派なれば、シベリアの豊富な石油・天然ガスやレアメタルなど、埋蔵量が極めて豊富な天然資源を、ロシアと米国とともに商用開発することが可能になる。
これらの詳細については、23日にサウジアラビアのジッダで行われる米露高官協議で詰められる予定である。このジッダ会議については、NHKも少なくとも、米露両国高官チームは、「今回のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領との電話会談を受け、23日にサウジアラビアで停戦に向けた協議を再び行う意向を示しました」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250319/k10014753961000.html)としている。
問題になるのは、米国のウクライナに対する軍事支援と軍事情報支援である。これについてNHKは、「一方、ロシア大統領府は、プーチン大統領が電話会談で紛争の解決に向かうための重要な条件は、ウクライナへの外国からの軍事支援と機密情報の提供を完全に止めることだと強調したとしています。これについてトランプ大統領はFOXニュースのインタビューで『われわれは支援については全く協議していない』と否定し、会談の内容について双方の隔たりも浮き彫りになっています」(同)としている。ロシア大統領府の声明のほうが正しいように思われるがその場に居たわけでもないので、水掛け論になってしまう。ただし、全面停戦になれば、軍事援助は必要はない。米露両国は、部分停戦から全面停戦、その先に終戦を見込んでいるから、軍事力や軍事情報の支援の必要性はないだろう。
なお、在露日本人実業家でロシア・ウクライナ情勢に詳しいニキータ氏によるYoutubeチャンネル「ニキータ伝〜ロシアの手ほどき」の最新版・「米露首脳電話会談の傍らで…〜3/19水曜版です」(https://www.youtube.com/watch?v=IveMOZKwbJQ&t=180s)によると、キエフ政権の内部でゼレンスキー「大統領」と側近中の側近、もしくは、影の大統領と言われてきたイェルマーク大統領府長官らとの政治的対立が明らかになってきたという。これに伴って、エスタブリッシュ・リベラル左派全体主義官僚独裁政権(英独仏)・欧州連合(EU)とゼレンスキー「大統領」派とのこれまでの密接な関係も、雲行きが怪しくなって来たという。
本サイトでは及川氏らが公開した動画に基づいて、最初の米国・ウクライナが最初に合意した停戦協定の中に、ゼレンスキー「大統領」の解任説(失脚説)が密約として含まれていたとの情報を伝えさせていただいたが、事態はそのような方向に向けて本格的に動き始めたようだ。サウジアラビアのジッダで3月11日に行われた米国とウクライナの高官チームの協議に際し、ゼレンスキー「大統領」は、影響力を講師できなかったようだ。
現在のところは、米露主導でウクライナ戦争の終戦に向けて動き出していると言っても差し支えない。トランプ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相の意向を受けて、中東に「パレスチナ国家構想」を前提としない「拡大アブラハム合意」によるイスラエルとサウジアラビアとの国交正常化を作り出そうとしており、そのためには、BRICSに加盟しているイランの理解を得るために、トランプ政権としてもロシアの協力が必要な情勢になっている。ウクライナ戦争の終戦が米露主導になるゆえんだ。トランプ政権は、イエメンの反政府勢力で、首都サヌアを含むイエメン西部の大部分を支配しているイラン傘下のフーシー派に対する攻撃を強めている(「フーシ派への大規模攻撃命令 トランプ氏『目的達成まで継続』https://newspicks.com/news/13883500/body/)。
ウクライナ戦争は、中東紛争と密接不可分に結びついている。サウジアラビアで、米国、ロシア、ウクライナの高官が協議するのは、偶然ではない。